ドラえもん法話:未来小切手帳

投稿日:2019年1月1日 更新日:

『ドラえもん』とは?
ある日、なにをやってもダメな少年・のび太を立派な大人にする為、未来からネコ型ロボットのドラえもんがやってきた!ドラえもんが取り出す、未来のふしぎな道具を使って2人が起こす笑いや感動を描いた、生活ギャグまんがの決定版。(公式ウェブサイトより転載)

22世紀からタイムマシンに乗ってやってきたドラえもんは「未来のひみつ道具」を出してのび太を助けてくれます。
はたして今回は・・・

未来小切手帳

きょうはマンガ雑誌の発売日です。お友達は読めるけど、自分はおこづかいが足りないので読めない。ずるい!自分も読みたい!と、お母さんにおこづかいの前借りを頼みます。あしたもらえるおこづかいを今日ください、と。
当然お母さんは許しません。あしたまで我慢しなさいと叱られるのび太くん。ドラえもんに泣きつきます。
マンガが買えればいいんだろう?マンガを買うくらいで使うのはやめておきなよ、とひみつ道具を出してくれます。それが「未来小切手帳」です。金額を書いてお店のひとに渡せばお金をつかうときのように買い物ができるから、とドラえもんはどこかへ行ってしまいます。
のび太は疑いながらも使ってみると、本当に買えてしまいます!すごい!なんでも買えちゃうんじゃないか!いやいやまさか、でも欲しかった模型があるから・・・とおもちゃ屋さんで8000円のお買い物です。
もちろん買えました、ひみつ道具ですからね。これでもう自分は世界一のお金持ちになった!と勘違いしたのび太くん。広場にいたジャイアンとスネ夫におこづかいをあげます。しずかちゃんの家まで行っていい顔をします。家に帰ると外商さんがいるので買い、電話がなるので出ると営業の電話だったので買い・・・と「未来小切手帳」を使いに使います。はたして大丈夫なのでしょうか・・・?
そんな時、家までのび太のおじさんがやってきます。のび太元気にしてたかい?おこづかいをやろう。ワーイおじさんありがとう!と、手渡された封筒を開けるのび太くん。・・・なんと、中身は空っぽでした。
ドラえもんに事の顛末を話すと、案の定です。なんてことをしてくれたんだ、のび太くん!「未来小切手帳は、きみが将来もらえるお金を前借りして使うことになるんだよ。おじさんからもらったおこづかいが空っぽだった?それは、さっそく前借りしたお金が回収されたんだ。はやく小切手を返してきてもらえー!」と。
大変だぁ!と泣きながらのび太は部屋を出ていくのでした。

欲に、自分を乗っ取られる

自然や動物が大好きな心やさしい男の子、ドジでからかわれているのび太くん。失敗をしたとしても一生懸命で、どこか憎めません。
のび太くんの姿とはいつも同じです。「あぁやっぱりこうなっちゃうんだよね。わかるなあ」と人間のダメなところを、嫌味なく教えてくれます。
「未来小切手帳」のおはなしからは様々なことが学びとして、くみとることができそうです。無駄遣いはしちゃダメだ、他人にいい顔したってなんにもならない、外に欲しいこころを向けるまえにまず自分に与えられている恵みをかえりみなさい・・・等です。
とは言うものの、分かっちゃいるけどやめられないのが人間の性というもの。のび太が代わりに示してくれています。

さて、今回、のび太の意識の変化に注目をしたいと思うのです。
おともだちが読んでいるマンガ雑誌を自分も読みたい、からお話しははじまります。そして未来小切手帳でマンガ雑誌が買えた後に、欲しかったおもちゃ・模型も買いたい、となります。気持ちが高揚して、たまたま出会ったジャイアンとスネ夫におこづかいを、しずかちゃんにも。
これらののび太の欲求とは、のび太の本心だったのでしょうか?
欲しい!という気持ち、いい顔をしたい!という気持ちは、のび太が本当にしたかったことだったのでしょうか。
「未来小切手帳」に振り回されての行いだったのではないか。この様子では、のび太にはクレジットカードは持たせられませんね。

おともだちがマンガ雑誌を読んでいる。自分だけは読めない。ずるい!・・・あしたまで我慢すれば読めるはずです。きょう読まなければならない理由ははたしてあるのでしょうか?気持ちはわかります。大人でさえ我慢とは難しいのですから、子どもであればもっと我慢がきかないものです。しかし、わかりますが、あしたのおこづかいでマンガ雑誌を買えばよかったのではないか・・・。読みたいなら借りればいい、所有したいだけならもっとお母さんを説得するのでは。
「未来小切手帳」で買い物ができたのび太くんは、欲しいおもちゃがある!と8000円の模型を買います。はたしてその模型は本当に本当に欲しかったおもちゃだったのでしょうか。本当に欲しかったのなら、ついさっき買ったマンガ雑誌も買わないでお金を貯めていたのでは?これこそお母さんやドラえもんを強く説得しているはず。ずっとこのおもちゃが欲しいと思っていたんだよね、と自分で自分を思い込ませる・・・ということをのび太はしたのではないか。
ジャイアンやスネ夫におこづかいをあげます。ドジでからかわれているいつもの自分を見失い、お金を渡すいい顔が本当の自分である!とまわりに見せたいのび太。
欲に振り回されて、どんどんとエスカレートしていくのでした。

足るを知る

遺教経というお経の、「知足(足るを知る)」について書かれている部分です。

汝等比丘、若し諸の苦悩を脱せんと欲せば、当に知足を観ずべし。
知足の法は即ち是れ富楽安穏の処なり。
知足の人は地上に臥すと雖も、猶お安楽なりとす。
不知足の者は天堂に処すと雖も、亦た意に称わず。
不知足の者は富めりと雖も、而も貧し。
知足の人は貧しと雖も而も富めり。
不知足の者は、常に五欲の為に牽かれて、知足の者の為めに憐愍せらる、是れを知足と名づく。

・・・足るを知らない者は五欲に牽かれて・・・
のび太は「未来小切手帳」をきっかけとした自分の欲に引っ張られてしまいます。そうして自分を見失ってしまった。
欲とは隙あらばむくむくっとうずき、欲を本心だと自分で自分をあざむかせてしまうもの。のび太が教えてくれています。
欲がないと人は生きていくことができません。しかし、振り回されては元も子もない。つらいばかりです。
「足るを知る」。自分自身の欲とうまく付き合うことは、わたしたち人間の人生における命題のようです。
ではどうすればいいか?ひとつには、外から見る機会を取ること、自分を俯瞰して見る練習をしておくことでしょうか。自分の色眼鏡をはずした状態で物事を見る、受け止める練習をしておくこと。
仏教の修行はたいがいそうです。ぜひお試しください。

しかし、さすがは心やさしいのび太くんです。外商さんや家にかかってきた電話から買ったものは、車と別荘でした。
たとえ欲に振り回されていたとしても、自分の家族の幸せを考えていたのでした。
わたしたちものび太くんのように、本来のやさしさを持っている。

そしてまた、のび太は必死になれる子です。大変だぁ!と泣きながらのび太は部屋を出ていって未来小切手を回収しにいきます。ほんとうにどうしようもなくなったらば、身動きがとれません。
わたしたちものび太くんのように、一生懸命に、必死になれるのです。その場その場で自分の人生を発揮することが求められるときがある。そんなとき、自分をさらけ出して、頑張ることができるか。どうしてもダメだなぁという私たち。それでも。
のび太くんには学ぶところが多いのです。

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