【えんぴつ写経】法句経その1

投稿日:2022年4月8日 更新日:

えんぴつで写経をしてみませんか。

円覚寺の横田南嶺老師も鉛筆でお写経することをおすすめしています。(→ 【一口法話:第五十二回】お経の力 – 鉛筆写経のすすめ –

写経と聞きますと、筆ペンや毛筆をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、鉛筆、万年筆、ボールペンなどで写経をしても大丈夫なのです。ガラスペンでの写経会を開催していらっしゃるお寺もあります。使い慣れたえんぴつで、こころ静かに削ってからのち、書写する。5Bくらいの濃い柔らかい鉛筆で、写経用のノートや、手帳などに書いてみてください。

お経とは、もともとはお釈迦さまの教えをまとめたものです。とても長い間は口伝でありましたが、時代や地域を渡っていくには文字が必要です。その地域に根付くために加筆や新しい経が生まれました。さらに各宗派のはじまりとなった人やその教えを継ぐ僧の教えも経と呼ばれるようになりました。

当時は印刷技術もありませんから、経を写す必要があります。この写すこと自体に意味を見出すようになります。経(教え)を聞き、実物を手に持ち、こころに抱き、行動にうつし、声に出し、思惟する。写経する。これには、大変な功徳があるとも言われます。

仏教のはじまりとなった人、お釈迦さま。その言葉に近いと言われる法句経から、最初のえんぴつ写経です。

◆えんぴつ写経:法句経その1

友松円諦訳、法句経197です。

意訳「われらを怨む人々の中にあって、憎む人々の間にあって、この私はこころにうらみなく、憎しみなく、楽しく生活する。」

安寧(幸福)についての章にある言葉です。

単純に、とてもこのようなことは難しいのではないかと思ってしまいます。

うらみ、怒りや憎しみといった感情を人は向けられると、反応してしまいます。相手を攻撃したり、自分が悪いのかと反芻したり、無視して逃避・防御したり、記憶にこびりつきます。また、まわりの人に感化され、自分も怨む人々になってしまう、怨みごころを持ってしまいがちです。

法句経は続いて、198には「心にいたみもつ人々の中にたのしく心いたみなく住まんかな」、199には「むさぼり深き人々の中にむさぼり心なくげにこころたのしく住まんかな」とあります。心病めるもののなかに心病むことなく幸福に生活する。心むさぼるもののなかに心むさぼることなく幸福に生活する。…と書かれています。

これは、自己犠牲をすすめるものではありません。怨む人・むさぼり深き人・心病める人と自分だけは違う!こうならないようにしよう!という意味ではないのでしょう。

ここには慈しみの目がある。怨む人・むさぼり深き人・心病める人とは、この私である。誰か特定の人物を、怨む人・むさぼり深き人・心病める人におとしこみ、自分とは違う人間だと追いやることではない。

怨む人・むさぼり深き人・心病める人のなかにいて、そんな人々とともに、この悪循環を脱出することを目指しているのだ、と見出す言葉でありましょう。

ヨーロッパでは大変な状況が続いています。ひとはみな何かしらの権力を持っています。親になると分かりますが、親という存在の子供への権力は絶大です。権力を持つとどんな人間であろうとも、かならず権力への依存心が肥大していく。また「〇〇のために」という言い訳を、自分を守るための理論武装に使い始めるのです。いやそんなことはないと思うでしょうか。そうならないように気をつけても、感情に振り回されてしまうどうしうようもないこの私がいます。

怨む人・むさぼり深き人・心病める人の真っ只中にいて、どうすればいいのでしょうか。

◆正しさへの依存、真理への依存

人生は決断と後悔の連続です。なにが正しい決断なのか誰にも分かりませんし、選択をなかったことにもできません。だからこそ人は、正しさや真理に惹かれるのかもしれません。明確で白黒はっきりした、こうしたら絶対こうなるという解決策を求めてしまう。この人はこういう人だから全部ダメだと短絡的に判断したくなる。テレビで放送されていたから、YouTuberが政府の陰謀を暴いていたから、などと思い込んで、そのあと自分で考えることを止めてしまう。

とても楽です。考えなくていいというのは。しかし結局は見かけだけの解決にすぎない。

複雑なことを複雑なままに受け止めて、なんなのだろう?という問いを持ち続ける。それが本当の幸せの姿なのかもしれません。

ブレない生き方、まっすぐな性格とは、あこがれます。ただ、自分が正しい、自分は権力を持って当たり前だ!にとらわれたとき人はおかしくなる。おかしいとも気づかない。

であるならば、ブレ続けていることこそ正しいのかもしれません。決断と後悔に右往左往して、それでも、なぜひとは最後には死ぬのに今を一生懸命生きるのか?という問いを閉じない姿勢が「つゆ怨みなく住まんかな」なのでありましょう。

◆えんぴつ写経おすすめです

えんぴつ写経は、筆よりも書きやすく、失敗してはいけない!という気持ちも湧きません。使うと短くなるので達成感もあります。えんぴつ写経おすすめです。(副住職)

-お寺ブログ, 副住職のつぶやき
-,

Copyright© 臨済宗妙心寺派 長光山陽岳寺ホームページ|虹の彼方に , 2022 AllRights Reserved Powered by micata2.