【コラム】お寺の結婚式

投稿日:2016年10月1日 更新日:

陽岳寺でも結婚式を承っていることをご存じでしょうか?
とある調査によれば、近年婚姻届を提出している人たちは年間約65万組だそうです(再婚など含む)。そして、婚姻届を提出した人たちによる結婚式の実施率は約70%。さらに、お寺での結婚式を行った人は1%にも満たないとのこと。
現代において結婚式と申しますと、チャペル、神社、ホテルなどパーティ会場やレストランでの式がメジャーなようです。江戸や大正頃までは、自宅での婚礼の儀礼にてお披露目を済ますのが一般的だったそうですが。
さて、結婚式を実施する形態の内訳は、チャペル式が約55%、人前式が約25%、神社式が約20%、その他約5%。
「**式」と名前の違いがあるということは、それぞれに意味合いが違うということです。
人前式とは、人の前での式。宗教色をなくして、招待客全員が結婚の証人となる自由なスタイルの結婚式。普通の結婚式ではないある種のイベントを行い、それを結婚式だとするクレイジー結婚式の流行も人前式を後押ししているようです。
神社式、神式。神社にて祀られているカミに対し、神職が祝詞にて結婚を報告する式です。大正天皇の御成婚にあやかって結婚式そのものが一般化された、という通説もございます。
チャペル式。結婚式専用の施設にて、キリスト教の作法にのっとり、唯一の創造神との契約と祝福をうける結婚式。ホテルの中であったり、結婚式場として建設されていたり、とザ・ウェディングの象徴でもあります。
お寺の結婚式。仏前式とは、仏さまと有縁無縁のご先祖方に対し、結婚を報告する式のこと。
結婚式の形によって、多くの違いがあるとお分かりになられるかと存じます。

私は2011年に結婚式を陽岳寺にて挙式いたしました。関連して披露宴会場をどうしようかとホテルや式場のブライダフェアを巡ったことを覚えております。また友人のチャペル式などにも出席することで、ひとつの疑問を持つこととなりました。それは、
「結婚という儀式について、結婚する当事者たち自身は、その式の意味について了承しているのか、納得感を持っているのだろうか」
という、幸せな新郎新婦にとっては、ほっといてくれよといった疑問です。
通説ですが、そもそも結婚式という形自体、後付けであります。しかし、後付けであろうとも、不思議な縁で結ばれた二人がこれから頑張って生きていこうという覚悟を示す場として、結婚式はとても大事なものでありましょう。
そして、西洋やザ・ウェディングへの憧れから、チャペル式を選ぶ方々が大変多いようです。お正月は神社へ、お葬式はお寺へ、クリスマスを祝う。と、3つの宗派混淆教こそ日本人の姿ではありますが、もしそれぞれの行事の意味を知らず、納得していなければ、ただ集っただけの会となりそうです。

それでは各結婚式の意味を見てみましょう。
キリスト教式ということは、少し考えるとハードルがなかなか高いように思われます。キリスト教式でありますから、キリスト教の基本、この世界をお造りになった絶対の唯一神への信仰は大切です。
チャペル式がたとえ結婚式場としての教会であったとしても、式はキリスト教にのっとっておりますから、創造主という巨大な存在との契約です。契約ですので、破ったときは?
さらに中近東や西欧由来の一神教では、信仰とは神との契約であり、現地人にとって契約そのものへの違和感がありません。ひるがえって、日本在住の我々はどうでしょうか。
・・・そう申しましても、日本では、信仰がなくともチャペル式が受け入れられ、唯一神のみ恵みと祝福を授けられるという点でいえば、幸せなのかもしれません。

家と家の結びつきである婚礼の儀式を、色濃く受け継いでいるのが日本の結婚式です。
土地に住むといわれるカミに対し、神職の祝詞によって結婚が報告される、神前式。
ケガレを祓い、祝詞を読み上げ、夫婦も玉串にふたりの心をのせてカミへと拝礼、誓いの言葉を述べる。そして盃を重ね合わせることで家と家の結びつきを象徴とする三三九度。
住んでいる町、生きている日本という国にいる私たちにとって、土地にいらっしゃるカミへと結婚を報告する神社式は道理であろうと思います。

仏さまや血のつながりを遡ってのご先祖方に対し、結婚が報告されるお寺の結婚式。
お寺の結婚式においても三三九度が行われますし、指輪の交換だけではなく、仏さまとの寿珠(数珠)の交換という名の授与もございます。
結婚される方々によって先祖への結婚の報告や、僧侶による追善供養も行われるため、お寺の結婚式は、家と家との結びつきについての視点が強いように思われます。しかし大切なのは、お寺の結婚式の中身は、血筋や家の押しつけではない、ということです。
たしかに今わたしたちが結婚を報告することができるのは、命のバトンが繋がれ続けてきたという奇跡の結果です。ただ結果は結果であり、結婚式というの奇跡の縁への感謝を示すことでしかなく、先祖や家や家族への感謝を強制するものではありません。お寺の結婚式の意味とは、結婚するふたりに、血縁を背負わせ縛ることではないのです。
結婚にいたる因果と縁起の法を喜び、先祖や仏さま方に感謝の報告と慶讃をし、私たちが生きているこの今と次の一歩を踏み出させる自由さを認め合うこと。悪縁を断ち、良縁を結ぶ。それがお寺の結婚式です。
どうでしょうか、結婚式にもいろいろな形があるようです。
自画自賛になってしまいましたが、お寺の結婚式のご紹介でございました。
陽岳寺でも結婚式を承っておりますし、出張での儀式執行も可能です。ウェディングプランナー様へのおつなぎも。どうぞご相談ください。

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