【コラム】無記と無明

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みなさまいかがお過ごしでしょうか。
陽岳寺の年中行事、5月第3土曜日の『おせがき』は中止といたしました。4月のはじめに、護寺会便り特別版とともにお知らせいたしました。特別版はご笑覧いただけましたでしょうか。
『おせがき』へ申し込みをする、となりますと郵便局や銀行へと足を運ぶこととなります。もしもがあったらば大変だと考え、苦渋の選択ではありましたが、今年度は塔婆供養も受け付けない形を取らせていただきました。申し訳ありません。
参列者を募る会としては開催いたしませんが、『おせがき』のお経はお読みします。
昨年2019年度の施餓鬼会には陽岳寺檀信徒のうち約240軒がご参加され、法要出席者は100名以上でした。
来年は2021年5月15日です。盛大にお勤めできることを願っております。

【コラム】無記と無明

新型コロナウィルス感染症によって亡くなられた方の冥福、罹患された方の平癒、早期事態収束を祈ります。なにより皆様のご自愛を祈念申し上げます。

さて、COVID-19が猛威を振るっています。
生活が一変した人もいる。何も変わらず、楽しみだけが増えている人もいる。
仕事がなくなり、お客さんも来てくれない。生活ができない。
家事育児でろくに仕事もできず、かといって外出自粛要請により出かけられないため、気が滅入ってしまう。
むしろ忙しくなってしまった。感染対策をせずにいらっしゃる方を相手にせざるを得ない職場環境で、ストレスがかかる。

わたしたちは様々な状況に置かれています。まわりの人とこの私の状況は違うため、参考になるものが見つけにくい。隣の芝生が青く見えてクサクサしたり、安心したり。悩みも尽きません。どうすればいいのか。
仏教はなにを言うのか。経典に答えを求めます。『無記』『無明』をご紹介します。

◆無記(むき):すぐ答えを出さずに、肝をさがす

形而上学的なことについて、お釈迦さまは答えませんでした。『無記(沈黙)』をもって応じたと言いますが、それはなぜか。議論の答えがない問題だからです。
たとえば、「手すりの消毒」はどれだけの頻度で行えばいいのか、議論の答えはありません。もちろん一定の正解はありますが、頻度を増やしてもきりがないものです。
それでは正解はというと、手すりやドアノブにはどうしても触ってしまうのですから、その手で粘膜に触れないこと、そして手を洗うことが答えとなります。

つまり、元を断つか、なってしまうのは仕方がないのでその後の対処を考えることです。予防と、掛からないような仕組みを作る。なってしまったときのことを考えて準備をする。
そうかといって元を断つ、予防とはなかなか難しいものです。きりがありませんから。
それならば、ストレスがかかる、気が滅入る、発狂しそうになった時用の対処法を用意しておくしかない。

◆無明(むみょう)

苦しみを無かったことにする…のではなく、苦しみがあるままに生きていくしかないのでどのように対処していくか、を説くのが仏教です。
なぜ苦しいのか。自分の思う通りにならないからです。
なぜ恐ろしいのか。分からないからです、見えないからです。この事実を『無明』といいます。人には、分からないものがある、見えないものがある。いつ病気になるのか、いつ結婚するのか、いつ亡くなるのか、いつ回復するのか、いつ事態が収束するのか。
やたらめったらの消毒や外出禁止を自身に課すのはなぜでしょう。他人へ自粛を強要するのはなぜでしょうか。それは、自身の『無明』を覆い隠したいからです。
正しく恐れるしかありません。分からない・見えないという自覚を出発点に、自分勝手な思いにくらまされず、お釈迦さまが『無記』で応じたように分からないことは分からないままに、肝となる部分をおさえていく。

マスクをしていない人を見れば心の中で咎め、せきをした人がいれば怪しむ。生活への不安がつのり、心身ともに疲れてしまう。
わたしたちはそのようにできているのです。自分という色眼鏡を通して世間を見てしまうのです。子どもがかわいいなぁと思うのは親バカの色眼鏡です。色眼鏡は幸せの元でもありますが、ときに物事の本質を見誤らせます。「手すりの消毒」問題のように。
色眼鏡をしていることを自覚して、ありのままに見るしかありません。物事の本質はどこか、肝はどこにあるのか探すのです。
テレビの情報番組は煽っているだけ。コメンテーターが感情的に怒っているだけなのを見るから、見ているわたしも不快になる。それでもついテレビをつけてしまうのはなぜか。

わたしたちひとりひとりが、自身の『無明』と付き合うしかないのです。コロナが落ち着きましたら、どのような『無明』があったのか教えてください。(副住職)

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